矯正治療は一般歯科治療と違い、時間のかかる治療法です。
一体なぜ時間がかかるのでしょうか。
ケース毎の時間のかかり方と合わせて解説します。
目次■歯科矯正はなぜ時間がかかる?
◎鍵は歯根膜と歯槽骨
歯科矯正治療はなぜ時間がかかるのか、疑問に思われる方も多いと思います。
矯正治療に時間がかかる理由についての鍵は、歯根膜と歯槽骨にあります。
矯正治療では、歯に力をかけることによって歯を動かしますが、その時押された方の歯根膜は縮み、反対側の歯根膜は引き伸ばされます。
歯根膜は一定の厚みを保とうとする性質があるため、一定の厚みを保つために、歯槽骨の吸収と増生を促します。
押された方の歯槽骨は吸収を始め、引っ張られた方の歯槽骨は増生を始めるため、歯の移動が起こるという仕組みです。
このような歯槽骨の増生は数か月単位で起こること、強い力をかけて動かそうとするとこれらの組織に大きな負担になってしまうことから、矯正治療には時間がかかるのです。
■矯正方法による矯正期間の違い
◎全体矯正の場合
全体矯正とは、奥歯を含む歯列全体を矯正する治療法です。
中には小臼歯抜歯を行い、そのスペースに歯を動かすというケースもあります。
大きな動きを伴うことも多いため、全体矯正の矯正期間は平均して長く、1~3年程度の時間がかかることもあります。
◎部分矯正の場合
部分矯正とは、多くの場合前歯のみを動かすための治療法です。
動かす歯列の範囲が少ないことから、2ヶ月〜1年半程度の時間で終わることが多いです。
しかし部分矯正は、重症度や範囲などによって適応とならない症例も多くあるため、短い期間で終わらせたいからといって部分矯正を選択するということは基本的にできません。
■大人、子どもの矯正期間の違い
◎子どもの場合
子どもと大人の歯の動かし方は、時期によって異なります。
子どもは(12歳頃まで)あごの成長を利用した矯正方法を選択することができます。
この期間の矯正治療を、一期治療と呼びます。
一期治療では、あごの成長を促したり、時には抑えたりしながら萌出する永久歯を正しい位置に並べます。
この矯正方法は永久歯への交換が始まる7歳~8歳から始めることができます。
永久歯萌出完了は12歳~13歳頃となるため、早い時期から矯正を始めると、5年以上の時間がかかることもあります。
また、その後歯列が整わなかった時は二期治療という治療期間に入ることもあるため、子どもの矯正には時間がかかることが多いです。
しかし、あごの成長を利用しスペースを広げることで、二期治療で抜歯を伴うケースを回避できる場合もあるため、大きなメリットがあるといっていいでしょう。
◎大人の場合
大人の場合は子どものようにあごの成長を利用した矯正方法は行えません。
個人差はありますが、治療期間は数か月から3年程度の期間となります。
■保定期間も忘れずに
◎保定期間とは?
保定期間とは、動かした歯がその場所に安定するまで歯を保定しておくための期間です。
マウスピース矯正では最後に使ったマウスピースを保定装置として利用することが多いです。
保定は一般的に矯正期間と同程度の時間がかかります。
1年かけて歯を動かした方は保定に1年、3年かかった方は3年程度の時間かかかるとされています。
【急ぎ過ぎは禁物、きれいな歯並びのために】
矯正治療は時間のかかる治療法です。
しかし、急いで動かしてしまうと歯や歯周組織にダメージを与えてしまうこともあります。
矯正期間が長く、ちょっとくじけそう……と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、長くきれいな歯並びでいるために必要な時間と考え、前向きに過ごせると良いのではないかと思います。