現在、大人にも大きく広がっている矯正治療ですが、昔は子どものものという考え方がありました。
矯正治療はなぜ、子どものものだといわれていたのでしょうか。
また、子どもの頃に矯正をしておくメリットは何でしょうか。
目次
■子どもの矯正とは
◎Ⅰ期治療
子どもの矯正治療はⅠ期治療とⅡ期治療に分けられます。
Ⅰ期治療は永久歯列が完成する12歳頃までに行われる治療です。
人間のあごの骨は12歳頃までに成長のピークを迎え、その後は緩やかになります。
Ⅰ期治療では、12歳以前はあごの成長を利用した矯正が可能です。
◎Ⅱ期治療
Ⅱ期治療とは、永久歯列完成後の12歳以降に行われる治療です。
あごの成長を利用した矯正ではなく、今あるあごの大きさに対して歯をきれいに並べる治療を行います。
成人の矯正と変わらない治療法です。
◎あごの成長を利用した矯正とは?
歯の大きさも顎の大きさも、どちらも先天的なものですが、歯の大きさは変えることができません。
しかしあごは成長し、後天的な要因によっても変化します。
そのため、治療によって大きさを変えることができます。
特に骨の成長が著しい学童期までなら、この方法で歯をきれい並べることも可能です。
矯正治療において、あごは土地、歯はその上に立っている家と表現されます。
あごの成長を利用して整えておくことは、家が建つ前の土地をきれいに整えておくようなものです。
土地をきれいに整えておけば、上に立つ家は安定します。
■子どもの頃に矯正するメリット
◎歯槽骨の増生が行われやすい
矯正治療では歯槽骨という、歯が植わっている骨が鍵となります。
子どもの頃はこの歯槽骨の増生が著しいため、大人に比べて歯の移動が容易という特徴があります。
歯と歯槽骨の間には歯根膜という膜があり、歯槽骨の吸収と増生は、この歯根膜に力がかかることによって起こります。
力をかけられた方の歯槽骨は吸収し、引っ張られた方の歯槽骨は増生を始めます。
大人になり、歯槽骨の増生が緩やかになってしまうと、矯正治療の吸収を起こしたままになってしまうというケースもあります。
子どもは歯槽骨の増生が著しいため、大人よりこのリスクが低いというメリットがあります。
◎癖などを根本的に解決しやすい
歯並びは、頬杖や片側噛みなど、その方の細かい日常の癖によって変化します。
そのため歯列に悪影響を及ぼす癖を取り除かないと、矯正の効果が得にくいとケースもあります。
子どもは慣れるのがとても早いため、これらの癖をより取り除きやすいといっていいでしょう。
また、小児期に癖を治しておくと、大人になってからもきれいな歯列を保ちやすくなります。
◎歯を抜かなくて済むことがある
あごの成長を利用し広げる矯正を行っておくと、その後のⅡ期治療で歯を抜く矯正治療を行う必要がないケースがあります。
また、あごのスペースを事前に確保することで永久歯がきれいに並ぶため、大人になってからむし歯や歯周病になるリスクが軽減され、抜歯となる可能性を減らすことができます。
◎装置などに慣れやすい
子どもの頃は矯正装置を入れても慣れやすいといえるでしょう。
個人差はありますが、子どもの頃の方が環境の変化に適応しやすいのと同じで、よりスムーズにその装置に慣れることができるケースが多いです。
【焦る必要はないが、この時期だけできる矯正がある】
矯正を始める時期は、永久歯が出始めた頃からがよいといわれています。
それ以前にも矯正を行うことはできますが、あごの成長がピークを迎える永久歯列交換期に矯正治療を始めると、多くのメリットがあります。
それぞれのお子さまの成長の速度がありますので、永久歯列への交換が始まったからといって、焦って矯正治療を始める必要はありませんが、子どもの頃に矯正を始めるとさまざまなメリットがあることは知っておくとよいでしょう。