矯正治療を始める前には、必ず精密検査と呼ばれる工程があります。
この検査は、歯並びを整えるだけでなく、健康な噛み合わせを実現するための大切な第一歩です。
ここでは、精密検査でどのようなことを行うのか、なぜ検査が重要なのかについて詳しく解説します。
目次
■矯正治療の成功は、精密検査から始まる
◎目に見えない問題を把握するために
見た目だけで治療を進めてしまうと、噛み合わせの不調和や顎関節の問題などが見過ごされてしまう可能性があります。
矯正治療を成功させるためには、見た目の改善だけでなく、機能面も考慮する必要があります。精密検査によって、歯や顎の状態を分析して診断を行うことで、治療成功につながる治療計画を立てることができます。
■精密検査では何をするの?
◎パノラマレントゲンで全体の状態を確認
基本的な検査としてパノラマレントゲン撮影があります。
これは口腔内全体を一枚で映し出すレントゲンで、歯の位置や本数、埋まっている歯、歯根の長さや角度、顎の骨の状態まで広範囲にわかります。
◎セファログラムで骨格のバランスを評価
矯正治療では、歯だけでなく骨格のバランスも大きなポイントになります。
セファログラムという横顔のレントゲンを撮影することで、上顎と下顎の前後的、上下的な位置関係を分析できます。
これにより、出っ歯や受け口などの不正咬合の原因が骨格によるものなのか、歯の傾きによるものなのかが明らかになります。
◎CT撮影で3次元的に骨の状態を把握
必要に応じて歯科用CTを撮影することもあります。
CTはレントゲンではわからない立体的な構造まで確認でき、顎の骨の厚みや神経の位置、歯の根の状態などを評価できます。
特に、歯の移動スペースがどれだけあるかを事前に知ることで、リスクを避けた治療計画が立てやすくなります。
◎口腔内写真と顔貌写真の撮影
治療前後の比較や、治療経過を記録するために写真撮影も行います。
お口の中の写真は、歯の傾きやかみ合わせの状態を確認するために必要です。
また、顔全体の写真では、矯正治療による顔つきの変化やバランスも評価できます。
◎歯型の採取や口腔内スキャン
口腔内スキャナー(iTeroなど)を用いて、歯並びの3Dデータを取得する場合もあります。歯の位置を正確に記録でき、マウスピースを作成するために必要な歯型採取の機器です。
精密検査で使用し、どのように歯が動いていくかのシミュレーションを患者さまに確認してもらう場合もあります。
■精密検査の結果をもとに治療計画を立てる
◎治療方針や使用する装置が決まる
検査結果をもとに、
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・どのような装置を使うか(ワイヤー矯正・マウスピース矯正など)
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・どの順番で歯を動かすか
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・抜歯が必要かどうか
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・治療期間の目安
などが決まります。この計画が曖昧なままだと、後になって「思ったより治療が長引く」「仕上がりに満足できない」といったトラブルにつながる可能性もあります。
◎治療リスクの説明もここで行われる
矯正治療には、歯根吸収や後戻り、むし歯のリスクなど、いくつかの注意点があります。
歯科医師は精密検査の結果を踏まえて、それらの説明を行い、治療計画を立てる必要があります。
不安や疑問があれば、このタイミングでしっかり質問しておきましょう。
【矯正治療を成功させる鍵は精密検査にあり】
精密検査は、矯正治療を始めるにあたって欠かせないものです。
CTやレントゲン、セファログラム、歯型採取などを通じて、歯や顎の状態を分析することで、安全な治療計画が立てられます。
見た目だけにとらわれず、噛み合わせや健康面まで考えた治療を行うためにも、まずは精密検査をしっかり受けることが大切です。
検査に時間と費用がかかることもありますが、後悔のない治療のために前向きに取り組んでみてください。