矯正治療を受ける際、多くの方が最初に不安を感じるのが歯型採りです。

今までの方法では、大きなトレーに粘土のような材料を入れて口に入れ、数分間動かずに我慢する必要がありました。

このやり方だと、嘔吐反射を引き起こしたり、息苦しさを感じたりする方も多く、歯型採りが苦手という理由で治療をためらうケースも少なくありませんでした。

この記事では、そうした従来の歯型採りに代わる新しい選択肢として注目されている口腔内スキャナー「iTero（アイテロ）」について、その仕組みやメリットを詳しく解説します。

■iTeroとは？

◎口腔内をスキャンしてデジタルデータ化

iTeroは、光学スキャンを利用して歯や歯肉の状態をデジタルで再現できる口腔内スキャナーです。

小型のカメラを口の中に入れてスキャンし、その場で3次元の立体データを生成します。

このデータはマウスピース型矯正装置の設計やその他の補綴物の作製に使われ、今までのような型採り材を使用する必要がありません。

◎リアルタイムで確認、修正が可能

スキャン結果はすぐにモニターに表示されるため、歯科医師と患者さまがその場で状態を確認できます。

必要があれば即座に再スキャンや修正ができる点もメリットです。

■iTeroのメリット

◎不快感が少ない

これまでの歯型採りは、トレーと粘土のような印象材を口腔内で数分間保持する必要があり、嘔吐反射などを引き起こす原因になっていました。

一方iTeroでは、細いスティック状のスキャナーを歯に沿わせて動かすだけで済むため、息苦しさや不快感などがほとんどありません。

◎型採りの精度も良い

粘土のような印象材は、基本的に人力で水を加えて練和を行うため、歯型の採取を行う医師によって仕上がりに差が出やすいというデメリットがあります。

わずかな気泡や変形などがトラブルの原因になることがありましたが、iTeroは術者の技術関係なく、誰が行っても高精度で歯の形をスキャンできるため、より正確な装置の製作が可能です。

◎時間が短く、ストレスが少ない

スキャンにかかる時間は数分程度です。

今までの印象材のように固まるまで待つ必要もなく、歯型の採得が完了するため、治療全体のスピードアップにもつながります。

◎精密な治療計画が立てやすい

iTeroで得られたデータは、マウスピース矯正に限らず、セラミック治療やインプラント治療にも応用可能です。

歯の動きや治療後の仕上がりを3Dシミュレーションで視覚化できるため、患者さまの理解と納得を得やすくなります。

◎省スペースでエコな治療方法である

印象材は使い回しができず、廃棄の手間もかかりますが、iTeroはデジタルデータを用いるため衛生的で、環境負荷も少ないというメリットがあります。

また、パソコン上でデータ化されているため、模型のように保管場所が必要なく、省スペースにもなります。

■どんな人に向いているのか？

◎歯型採りが苦手な方に

嘔吐反射が強い方や、圧迫感を感じる方にとって、iTeroは良い選択肢です。

口の中に大きなトレーを入れる必要がないため、精神的、身体的ストレスを大きく減らせます。

◎効率よく治療を進めたい方に

データ送信や装置の設計が素早く行え、輸送の手間もないため、治療開始までの時間も短縮されます。

【歯型採りの常識が変わるiTero】

iTeroの登場により、「歯型採り＝苦しい」というイメージは過去のものになりつつあります。

負担が少なく、より正確に歯型が採取できるこの技術は、矯正治療をより身近で快適なものへと進化させました。

今まで歯型採りに不安があった方や、マウスピース矯正に興味がある方は、iTeroを導入している歯科医院で一度相談してみてくださいね。